
2010.07.19 月曜日 18:20
「……やっぱり電池切れなんじゃないのか?」 彼はそう言うと、少し乱暴な扱いで手に持っていたカメラをテーブルに置いた。 「そんなわけ無いよ。昨日、そのカメラを買う時に電池も一緒に買ったんだから……」 彼の言葉や行動に少々腹を立てながら、私はテーブルの上のカメラを手にとった……。 「そのカメラ、お前にはまだ無理なんじゃないのか?」 無骨でぶっきら棒でイカメシイ顔の中年紳士───。 「いいじゃない。別に……」 一目惚れだった。彼との出逢いはそれはもう運命的且つ衝撃的で……。 出逢った場所は映画館。ずっと気になっていた映画『恋愛寫眞』のリバイバル上映に行った時だった。 映画を観終わった時、私は号泣していてすぐに席を立てなかった……。 それでも、しばらくして落ち着いた私は彼を探しに行った。 数日後、私は街中で思わず叫びそうになった。彼がそこに居たからだ。 でも彼は、今、私の前にいる。 「それにしても、お前、本当にこの映画好きだな……」 テレビを指差して、呆れたように彼が言う。「別にいいじゃない」と言おうとして止めた。 「みかん喰う?」 彼の名前は"しずる"という。静かに流れると書いて"静流"だ。本当は違うけれど私はそう呼んでいる。 「みかんとカメラはいいけど、マヨヌードルは禁止だからな……」 願いが叶い幸せなはずなのに私は……。 『???????』 「何してんの?」 [カシャ!] 勢いよく作動したシャッターの向こう側で情景が切り取られる……。 「これからよろしくね!」 彼がみかんをくわえたまま間抜けな声を出した。 「私は静流に言ったの!」 彼が珍しく神妙な顔つきで呟いた。 「気持ち悪いからカメラに名前付けるのやめてくれ……」
クオリファイ───Qualify.
「じゃあ、ジャンク品を掴まされたんだろう?」
誕生日は知らないけれど40くらいだと聞いている。私の2倍くらい。
きっと私が見たことないものを沢山見てきたのだろう。
彼は唐突に目の前に現れて、私は胸を鷲掴みにされた……痴漢とかじゃなくて。
心が囚われた。映画の内容なんて忘れてしまいそうなほど……忘れてないけど。それでも、前半は上の空だったと思う。
もちろん、当ても無く、思いつく場所も手がかりも無く……当然、その日彼に再会することは出来なかった。
彼は私の住む町のカメラ屋さんに居た。それからというもの私は毎日そのお店に通った。
毎日通って、少しずつ彼のことがわかったけれど、それでも距離はなかなか縮まらなかった……。
本当にどうでもいいことのように思えたからだったけれど、彼には私が拗ねているように見えたかもしれなかった。
「うん。」
無骨な見た目には合わないけど、私はそう呼んでいる。
「はいはい……」
「問題です。電池を逆に入れるとカメラは動くでしょうか?」
「え…?」
「答えは……」
「はぁ?」
「静流ってそのF-1のこと?」
「うん。」
「あのさ……」
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